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PAOS独自のVI表現デザインへの工夫と使命

2010 / 7 /15


PAOSロゴアルファベットポスター

このポスターは、1993年にモリサワ 「たて組ヨコ組」が発刊10周年を記念して41人のクリエーターを選びポスターを制作した際の、私の作品(実際はPAOSのデザイン制作部門との合作)です。その時にモリサワさんのご好意で、下部にフレーズやロゴを入れたPAOS専用版を別途作っていただきました。

私は、デザイナーとしてはニュートラル性を維持していくため、基本的に自らの作品としての表現物は創らない姿勢を貫いてきました。ただ、この企画の際は全体のディレクターを務めておられた故田中一光先生からのご指名もあり、敢えてポスターを制作してみました。出来るだけPAOSらしいものをと考え、それまでに関わって生み出した成果品である各企業のロゴから、A,B,C...のアルファベットのイニシャル26文字から選び、一枚のポスターに仕上げてみたのです。

振り返ってみると、いわゆるCIの中のVIの認識、つまりヴィジュアル・アイデンティティ・システムの存在価値を明示するために、これまでPAOSでは、いくつもの「C」(著作権)といえる表現の工夫をこらしてきました。
そうしたPAOSのオリジナル表現の代表事例について述べてみましょう。

CI(企業のアイデンティティデザイン)の中で、VIは非常に重要な位置を占めます。
最近は、CIというと、まるで企業ロゴをデザインすることのような、いわゆるお手軽に金になりやすい部分のみを切り取ったCIプロジェクトが大勢を占めてしまっているのは残念なことです。加えて著作人格権者が誰かも明示されないものも多くあります。これではデザインビジネスそのものを自らシュリンクさせているようなものです。

かつてCIはMI(マインド・アイデンティティ)+VI(ヴィシュアル・アイデンティティ)+BI(ビヘイビア・アイデンティティ)から成ると称され、これは基本的には正解でした。ただ同時平行的にこの3大テーマに挑戦して失敗を重ねるCIプロジェクトが増えてしまう現象も生じました。しかし、それでも現在のような企業ロゴの仕事しかない、裏を返せばデザイナーが部品的存在になってしまっている状況よりは、まだましと言えるビジネス環境にありました。

つまり、VIに特化していくのは、CIの中でもVIが一番象徴的で、強い印象や専門性を持つ分野であったということの証明でしょう。

VIS Treeの誕生
CI思考の中のこの象徴的なVIの存在価値を明示するために、PAOSではいくつか表現手法に知財権的工夫を凝らしてきました。そ一つがCIS(VIS)Treeと呼ぶ、系統樹の手法を用いた独自の表現であり、もう一つが旧新ロゴ比較等表現での情報発信です。
VIS Treeは本来、CIとは部分最適化以上に全体最適化を優先する手法であり、たとえ名刺のような小さなアイテム一つといえども、全社的な美的ストックにしてイメージ構築の重要な部品であることの認識を喚起するために考え出した、記号的手法です。

このVIS Treeの使用事例は、セキスイハイムの事業開発計画の一環としてVIの重要性を誰にでも解りやすく認識してもらおうと使用を始めたのが最初です。1973年のことです。


最初の系統樹表現、セキスイハイムブランドBIS Tree

その後もこうしたVIS Tree表示は、大変効果的なノウハウですから各社で活用していくことになりますが、最初の事例であるセキスイハイムのものだけが縦型で、それ以降は全て横型になっています。
これは英文ロゴの汎用化など横組みの方が表示しやすいものが多いことに理由があります。


ブリヂストン


NTT

もう一つの手法「旧新ロゴ比較の一覧表示」は、矢印でもって旧と新の違いを見せ、企業やブランドの新しさや同時代性、またビジネスへの適合性を一目瞭然に示してしまおうとしたもので、1980年代になる頃からPAOSが独自の表現手法として使い始めています。


旧新ロゴ比較


この旧新比較表示は後年数を増やしていく

これは、並べて見せられるほどに開発事例が多くなり、比較効果や群効果が出せるようになってきていたことと、もう一点は基本となるロゴのデザインだけは著名な実力派クリエーターに発注するケースも増えて来ていたからです。
ロゴのデザインというものは、当然、知的財産権、中でも著作者人格権と大きく関わりを持つ存在ですから、著作人格権者を明示する必要が生じます。そこで考え出されたのが、この旧・新比較表示で、この見せ方もPAOSオリジナルです。

シンボルは企業思想の凝縮
企業ロゴなどのデザインで、最も重要なのは、そこにいかに多くの企業思想が凝縮されているか、組織として語るべきものを内包しているか、当該企業の知的美的ストックとして何十年もの間マーケティングマネジメントツールとして機能しうるか、ということです。

つまり、企業ロゴというものは、何十年にわたり使い続けるという、時代を超えた造形性や記号発信力をもっていることが重要であり、また長期的に企業経営や事業発展を牽引し支えていく役割を担っていける存在価値を持つべきなのです。

時代を越えて新鮮さを失わないロゴデザインを目指して

その意味では、今日の優れた企業やブランドのロゴとは、単なる表現物としての域を超え、内・外の行動を触発して、良い経営環境の創出を伴ってこそ存在意義を持つのだと言えます。同時に成熟社会となっていくわが国においては、社会や生活の中に美的価値を提供していけることも企業責任といえそうです。

こうした幅広い役割を求められる現代の優れたロゴをデザイン開発していくためには、「ロジック→レトリック→シンボライゼーション」といった開発プロセスの質の保持も重要です。これは理解発信・意向(コンセプト)発信・感覚(記号)発信の開発プロセスの各ステップを、間違いなく切り拓き、固有の知財を築いていくことでもあります。

たとえば人は企業ロゴを見せられれば、そこには否応なしに内的参加という心理的現象が生じ、意識下にもすり込まれて行く訳ですし、同時に街の景観や生活の美観も創出して行くわけですから、その経営的役割と責任は大きいといえます。そうした意味でも、安易な妥協の産物としての企業ロゴの存在は許してはならない、と私は考えています。


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投稿者 Nakanishi : 2010年07月15日 17:07