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« 久しぶりの自著「コーポレート・アイデンティティ戦略」刊行に、最近の出版界を思うメインSTRAMD前期講義終了 »

著書「コーポレート・アイデンティティ戦略(Epi-CI)」刊行に想う

2010 / 7 /29

前回に続き、拙著「コーポレート・アイデンティティ戦略」(誠文堂新光社刊)への想いを書いておきましょう。

本当は「Design Thinking 経営」というような、デザインの拡がりや可能性を感じさせるタイトルにしたかったのですが、気がついたら表記のような書名に決まってしまっていました。英文タイトルの方なら多少変えられるというので、Epiという言葉を付けて”Epi-Corporate Identity Strategy by PAOS”という英文書名にして貰いました。Epiとは「〜の上」とか「次の〜」といった意味を表す用語で、これは娘の学んでいる専門分野、新しい生命情報科学(単なる遺伝子解明の先)の分野をEpi-Geneticsと称するのだと教えられ、なかなか良い言葉だと冠に頂いた次第です。どうせコーポレート・アイデンティティ戦略などといった長い書名は、そのまま呼ばれる筈もありませんから、《Epi-CI/エピシーアイ》と呼び合おうと考えたわけです。


表紙の英文タイトル

最近のCI(コーポレート・アイデンティティ)プロジェクトは、アイデンティティ、本来の「企業の拠って立つところ」といった語義から、残念ながらまるで外れたものが多くなってしまっています。そのせいでCIに関わるデザインビジネス分野そのものまで、数十年後の企業存立に向けてというより、大部分はまるで表現上の処理屋的な存在に成り下がってしまったのは悲しいことです。

そこでこの度の拙著では、PAOSで永年にわたり手掛けさせてもらいましたプロジェクトのいくつかを思い切って戦略やコンセプトワークのデザインから一連の流れとしてトータルに開示し、「デザイン発想でここまでやれるのですよ」という事実を知っていただこうと考えた次第です。


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企業コンセプトの掲出例

私がPAOSにおいてこれまでに手掛けて参りました諸プロジェクトを振り返ってみますと、マツダが39年、セキスイハイム38年、小岩井34年、松屋銀座33年、ベネッセ31年、ブリヂストン30年、ケンウッド29年、INAX27年、、、、といったように既に長い年月を経ていて、いずれも開発当初に立てた経営計画や理念目標をほとんど達成し終わっていますので、その内容を可能な限り開示し、最近はすっかり勢いや元気をなくしてしまっているわが国企業や経営者の多くに、もっと「巨視観を持って臨め」「デザインという右脳型ノウハウを経営に活用しよう」「美意識や文化観を企業変革に取り込め」「独自の理念を持って個業化を進めよう」等々と述べたい気持ちでいっぱいなのです。

また長い時間が経過する間に、上記企業の中には一度大成功してまた下り坂になってしまったような会社があり、当時のコンセプトを現代に当てはめ焼き直しても結構な成果が上げられるのではないか?と思えるようなケースも存在すると考えています。


松屋銀座立て直しのための4つの基本方針


例えばセキスイハイムのロゴの変遷にもいろいろ内的事情がありました

ビジュアルデザインの基本要素の表現レベルなどでも、感覚訴求の持つ独自の力の意義が判らず(信じられず?)、ロゴの美的水準を明らかに落としてしまった改悪事例もあったりして、残念の極みです。こうした事例のデザイン作業を担当したデザイナーに直接会って、リ・デザインの理由を納得のいくかたちで説明して貰いたいとさえ思います。
それは日本のデザイン表現水準、生活や社会の美観とも関係の深い事態なのですから。今や企業の公的市民性や生活文化を無視して自社の利益しか考えない経営がうまくいくとは思えません。

今回の拙著を著した目的はもう一つあります。
それは、次回書きます「STRAMD(戦略経営デザイン人材育成)」の、教科書というか講義のガイドラインとして使いたいという目的もありました。


Design Thinkingで企業変革・経営革新の図れる人材育成プログラム≪STRAMD≫

本書には出版者側の選択で合計25例のケーススタディが載せられていますが、あらためて読み返してみますと、私たちがアーカイビングしている資料や現実にあった事実の、ほんの僅かしか掲載し得ておりません。ですから、STRAMDの講義ではそうした部分も詳しく補っていければと考えています。

わが国企業やプロジェクトの担当者の多くは結構人事のローテーションも多く、加えて、経営風土としても自社の歩みのアーカイビングを重視しない企業が多いですから、本来は重要な資料保管すら成されてないケースが大部分です。


各社への開発・提案記録資料とマニュアル類の数々


40年にわたる記録スライド類の集積(これでもごく一部です)

わが国の場合、こうした産業史的記録保管に対するエンジェル(支援家)や篤志家はほとんど皆無ですから、果たしてPAOSがいつまでこれらの開発記録を保持し続けられるか判りませんが、資金的にも、私自身の年齢からいっても、活用できる今、それを少しでも次の人材育成に使っていきたいと考えている次第です。STRAMD開講はその一つの証のつもりです。

でもEpi-CIが出来上がってみてつらつら眺めているにつけ、40年ほどの間に、本当に凄い量のプロジェクトを手掛けてきたことに自身驚かされます。

同時にプロジェクトを通じてお世話になった皆さま方、その中にはわが国を代表する経営者の方々も沢山いらっしゃいますし、素晴らしい切れ者担当者の皆さまにも恵まれてきたのですが、今年になってからだけでも、黄泉(よみ)の国に旅立たれた方も多く、その鎮魂の意味も込め、拙著を著しましたことを最後にご報告させていただきたいと思います。
やがて私にも順番は巡ってくるわけですから。


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Blog内にてご紹介させていただく場合もございますので、何卒ご了承願います。

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中井透様からのコメント

初めまして、中井と申します。
『コーポレートアイデンティティ戦略』、拝読させて頂きました。
恥ずかしながら、この本で中西様やPAOSというお名前を初めて知り、こちらのブログに辿り着きました。

私は経済学部を出た後、デザインを学びました。
私はもともと経営や経済という一見数的なものと、デザインや文化といった一見数的でないものとの関係性について興味を持っておりましたし、追究してみたいと考えていましたので、> CIで会社を表すということに深く感動を覚え、そういった物を制作したいと考えておりました。

卒業後、ある小さなデザイン会社に就職しましたが、そこで取り扱われているデザインとは会社の収益に繋げるための商品でしかない、と切実に感じました。
そこで、あるベンチャー企業のCI(ロゴマーク)制作に携わりましたが、会社の方針としては「何案か出しといて」という感じであり、先方の理念に沿ったものにしようという気概はあまり感じられませんでした。私はささやかながら、先方よりヒアリングした結果、 「こういった理念でしょうか」と提示したところ、すごく気に入っていただいた、という経験をいたしました。
それでも、あまりにも稚拙なものだったとは思いますが。

その後、別事業としてベンチャー企業を立ち上げることになり、その設立に携わる経験をしました。
そこで私はロゴマークや社名を通じて、会社を導いていきたいと考えましたが経営者のちょっとした好みで決まってしまうことが多く、ロングスパンで物事を説明したり決定したり出来る状況ではなく、自分の力量のなさを痛感した次第です。
そして結局、方向性はうやむやなまま、経営の危機に陥ってしまっております。

そういった経緯から、私は、組織を動かすためにこそ、意味のあるデザインを必要とするのではないのか、そして、そのためにはあらゆる調査や説明手段を駆使しなければなし得ないのではないかというような考えに至り、色々思い悩んでいたところ、たまたま書店で『コーポレートアイデンティティ戦略』が目につき、思っていたことと非常に近かったものですから、大変感動しました。

御社のような考えでもって、デザインに取り組んでいる企業というのは他にないのではないでしょうか。
会社経営というところに踏み込んでいく、ということ自体、リスクが大きく誰もが敬遠するのかも知れませんが、それを実行せずして、閉塞感のある日本企業を変えることは困難なのではないか、と最近感じています。
また本にも書かれていたように、短期的にロゴやブランドを変えてしまうということに常々疑問を感じています。
先日も、アパレル企業のGapがロゴを一新したにも関わらず、ユーザーの意見を聞いて元に戻したというようなことがありましたが、経営陣の意思を示すものがロゴでありCIではないでしょうか。
このことは、断固として変われなかった経営陣の姿勢が如実に現れていると感じました。

ブログの内容とあまり関係のない長文になり失礼致しました。
あまりに良い本だったので、思いをお伝えしたかった次第です。
これからも益々のご活躍をお祈り申し上げます。



投稿者 Nakanishi : 2010年07月29日 12:59